月100万円の採用代行を5年続けた会社に、何が残ったか

採用費の2つのタイプ「消費型」と「資産形成型」の比較アニメーション コラム記事

問いを置く

「月100万円の採用代行を5年続けて、何人採れましたか?」

この質問に答えられる経営者は多い。「年間でこのくらい採れた」「5年間で何十人入社した」――事業を支える人数は、入社者名簿を見ればわかる。

しかし次の質問は、答えに少し時間がかかる経営者が多い。

「では、5年間で採用の何が、社内の資産として残りましたか?

採用代行を5年続けた会社は、5年分の請求書と、5年分の入社者名簿は持っている。
だが、5年分の選考設計のノウハウ媒体別のROIデータ候補者対応のスクリプト辞退理由の傾向――これらが社内資産として蓄積されているケースは、私たちが関わってきた範囲ではほとんど見たことがない。

採用費は、運用次第で「広告費型」にも「資産形成型」にもなる。
そして大半の中堅・中小企業の採用費は、知らないうちに広告費型に寄っていく。

採用費が「消える」3つのパターン

LAPUPで複数の経営者・人事責任者と話をしてきたなかで、採用費が広告費化していく構造は、ほぼ次の3パターンに集約される。

パターン1: 媒体運用が代行依存になる

「どの媒体に、どの時期に、いくら出すか」――この判断ロジックが代行会社のなかで完結し、社内には結果だけが報告される。
来年も同じ媒体で同じ予算を組むしかない。なぜならその媒体の効果を判断する内部データが、社内には残っていないから。

パターン2: 選考プロセスが属人化する

採用担当者が一人で面接設計から候補者フォローまで担っている会社は珍しくない。
その担当者が退職した瞬間、選考プロセスはゼロから設計し直しになる
これを「採用担当者依存」と呼ぶこともできるが、本質は業務構造が定義されていないこと。

パターン3: 意思決定が代行のなかに閉じる

「次年度の媒体構成」「面接フローの見直し」「内定後フォローの設計」――
本来、社内で議論されるべき意思決定が、代行会社の月次レポートを確認するだけで年が変わっていく。

今年もこの体制でいきましょう」が3年連続で同じ意味の言葉になっている会社は、意思決定が代行のなかに閉じている。
社内に判断材料がないから、社内で議論ができない。これが構造的な詰まりを生む。

「採用代行が悪い」のではない

ここで誤解されたくないのだが、私たちは採用代行(RPO)を否定したいわけではない。

採用代行は、立ち上げ期や繁忙期、専門領域の採用において極めて有効だ。
社内に採用担当を雇うより、トータルコストが下がるケースもある。

問題は、代行を使った結果として社内に何が残るように設計されているかだ。

代行会社に丸投げで5年が経った会社と、
代行会社を「外部チーム」として扱いながら社内に業務マニュアル・媒体ROIデータ・候補者データベースを蓄積してきた会社では、
5年後の採用筋力が桁違いになる。

費用は同じでも、残るものが違う。

私たちが伴走したある中堅製造業(社員50名規模)では、代行会社との関係は3年継続したまま、その間に「月次レポートの見方」「辞退理由の社内タグづけ」「面接官評価の標準フォーマット」の3点だけを社内に積み上げた。
1年目はほぼ変化が見えなかった。2年目から、社長が「次の媒体予算は社内で決められる」と話すようになった。
代行は切らずに、社内に残るものを増やしただけだ。

「会社の中の採用力」という概念

LAPUPでは、これを「採用力の内製化」と呼んでいる。

注意してほしいのは、内製化は「採用担当者を社内に増やすこと」ではないという点だ。

内製化の本質は次の3つだ。

  1. 業務構造の定義: 媒体運用・選考設計・候補者対応の各業務が、誰が辞めても続けられる粒度でマニュアル化されている
  2. データの社内蓄積: 媒体別ROI、辞退理由、面接通過率などが社内のフォーマットで管理されている
  3. 意思決定の社内化: 「どの媒体に、いくら、いつ出すか」の判断が、社内で完結している

採用代行を使ってもいい。むしろ使ったほうがいい局面もある。
ただし、この3つが社内に残る形で代行を使う。これが資産形成型の採用費の使い方だ。

経営会議で見るべき1枚の表

ここまで読んで、自社の採用が「消費型」か「資産形成型」か、判断がつかない経営者もいるはずだ。

その場合、人事責任者に1枚だけお願いしてほしい資料がある。

「過去3年間の採用費の使途分解と、社内に残った成果物・データの一覧」

採用費の年間額だけを並べた表ではない。
何にいくら使い、その結果として社内に何が残ったか」を1枚にする表だ。

この表を作れる会社は、すでに資産形成型に近い。
作れない、あるいは「残ったものが少なすぎて埋まらない」会社は、いま、見直す価値があるかもしれない。

次の一歩

採用費の構造を組み直すのに、いきなり代行を切る必要はない。
むしろ、現在の代行体制を尊重しながら、「社内に残る部分」を1領域から増やしていくのが現実的だ。

LAPUPは、この採用業務の内製化と体制整理を支援する仕事をしている。
社内に採用筋力を残すための、業務構造の整理と仕組み化の伴走者として、採用業務が社内で回り続ける状態づくりに伴走している(採用ページの制作・運用そのものは私たちの守備範囲ではない)。

「採用費を年間で見たことがない」
「社内の採用担当が辞めたら何も残らない気がする」
「代行に頼り続けることに、漠然とした不安がある」

このどれかに心当たりがある経営者は、一度、自社の採用費の3年分の使途を1枚にまとめてみてほしい。
そこに出てくる景色が、次の打ち手のヒントになる。

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