手取りが変わる10月、既存社員から「求人のほうが条件がいい」と言われる会社

社労士・行政書士の先生へ

9月は、先生方が算定基礎届の結果を顧問先へ返している時期だと思います。定時決定で決め直した標準報酬月額は、日本年金機構の説明どおり「9月から翌年8月までの各月に適用」されます。

そして保険料の控除は、「当月支払う給料から前月の標準報酬月額にかかる保険料を差し引くことができ」る扱いです。つまり翌月控除の会社なら、新しい標準報酬月額が効いた保険料が引かれるのは10月に支払う給与から。当月控除の会社なら9月支給分からです。

先生方は、この「10月の給与から手取りが変わります」という案内をすでに出しておられると思います。この記事でお伝えしたいのは、その案内を受け取った社員のほうが、そのあと何をするかの話です。

手取りが減った月に、社員は自社の求人を開く

標準報酬月額が上がった社員は、10月の給与明細で控除額が増えます。昇給していても、手取りは思ったほど増えていない。人によっては前月より減っている。

このとき、少なくない人数が同じ行動を取ります。自分の会社が今出している求人を見るのです。

理由は単純で、そこが「自社の待遇が数字で書いてある、いちばん近い場所」だからです。就業規則や賃金規程は手元にありませんが、求人はスマートフォンで3秒で開けます。

そこで何が起きるかというと、いま募集している人の条件のほうが、自分より良く見えるという状態です。

なぜ「今の求人のほうが良い」状態が起きるのか

弊社は中小企業の求人原稿の作成・改稿を、代表がこれまでに累計2万件以上手がけてきました。その中で繰り返し見てきたのは、次の構造です。

  • 求人票の給与は「採るために」書かれ、既存社員の給与は「積み上げで」決まっている。採用市場が動いた分だけ募集条件は上がりますが、在籍者の賃金はそのスピードでは上がりません
  • 求人票の下限額は、最低賃金の改定に合わせて毎年上げざるを得ない。一方で、数年勤めた社員の時給がそれと同じ幅で上がっているとは限りません
  • 求人票には手取りが書かれていない。社員は自分の手取りと、求人の額面を並べて見ます。比較の前提がそもそも違うのですが、見ている側にその区別はありません

この3つが重なるのが、ちょうど10月です。最低賃金の改定で求人の下限が上がり、社会保険料の改定で手取りが動く。会社は何も悪いことをしていないのに、社内から不満が出る月になります。

先生のところに来るのは、たいてい一段あとの相談

この不満は、その場では表に出ません。出てくるのは少し経ってからで、しかも形が変わっています。

  • 「賃金体系を見直したい」という相談
  • 「新人と既存社員の逆転をどうするか」という相談
  • そして、退職の申し出

賃金体系の設計も、就業規則も、社会保険の手続きも先生の領域です。弊社が立ち入るところではありません。ただ、その相談の入口を作っているのが、外に出ている求人票の側である、というケースが実際にあります。

会社は「制度の問題」として先生に持ち込みますが、火をつけたのは求人だった、という順番です。

顧問先に、この一言を

10月の給与明細を配る前に、顧問先へこう聞いていただくだけで足ります。

「今月から社会保険料が変わるので、手取りが動く社員さんがいます。そのタイミングで、いま出している自社の求人を社員も見ますよ。先に一度、開いて見ておきませんか」

見る場所は3つです。ハローワークの求人(求人者マイページ)、有料媒体の掲載中原稿、自社の採用ページ。3つとも同じ条件になっているかを見るだけで十分です。

実務でよくあるのは、媒体の原稿だけ最新で、自社の採用ページが2年前のまま残っている、という形です。更新した担当者が退職していて、誰も触れなくなっている会社が本当に多いところです。社員が見るのは、たいていその放置されているほうです。

おわりに

社会保険料の改定は、先生にとっては毎年の手続きですが、顧問先の社内では「自分の待遇を数字で見直す月」でもあります。手続きが正しく終わっていても、社内の納得はそれとは別に動きます。

弊社は、その求人票と採用ページ、応募が来てからの対応までを、外部が代行して回すのではなく、会社が自社で回せる形に整える支援をしています。労務・社会保険・許認可には立ち入りません。先生の領域はそのままに、採用の入口側だけを担当します。

顧問先との協業の形については、社労士・行政書士の先生向けのご案内にまとめています。


出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」(「決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。」)および同「厚生年金保険料等の納付」(「当月支払う給料から前月の標準報酬月額にかかる保険料を差し引くことができ」ます/納付期限は納付対象月の翌月末日)。控除の時期は各社の給与規程により当月控除の場合があります。最新の情報は日本年金機構の公表をご確認ください。

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