紹介会社を立ち上げたが決定が出ない|候補者が消える工程を、7段階で紙1枚に並べる

コラム記事

許可は取った。求人もある。求職者との面談も何件かやった。それでも決定が出ない。人材紹介を新しい柱として始めた会社から、立ち上げから半年前後で聞く相談です。先に結論を書きます。「決定が出ない」は原因の名前ではなく、結果の名前です。求職者との接点から入社承諾までは7つの工程に分かれていて、決定が出ない会社は、そのうちのどこか1〜2か所で候補者が消えています。どこで消えているかを数えないまま「集客を増やす」「求人を増やす」と動くと、消える場所はそのままで、消える人数だけが増えます。この記事では、7つの工程と、それぞれで候補者が消えるときに起きている症状、直近3か月の候補者を紙1枚に並べて自社の詰まりを特定する手順、直す順番を扱います。許可の取り方や、始める前に確かめることは別の記事で扱っているので、ここでは「始めたのに決まらない」状態に絞ります。

「決定が出ない」は、7つの工程のどこかで人が消えている

人材紹介の1件の決定は、求職者が会社の前に現れてから、内定を承諾して入社するまでの、ひと続きの流れの終点です。この流れは、どの会社でもおおむね次の7つの工程に分かれます。

工程 何が起きる場面か ここで候補者が消えるときの症状
① 接点 求職者が自社を知り、登録・問い合わせをする そもそも登録が無い。あっても、紹介できる職種と合わない人ばかり
② 面談 求職者と話し、希望と経歴を聞く 登録はあるが面談に来ない。来ても連絡が途切れる
③ 求人の提示 その人に合う求人を出す 面談はしたが、出せる求人が無い。出しても「違う」と断られる
④ 推薦 求人企業へ候補者を推薦する 求職者は応募したいのに、企業へ推薦するまでに時間がかかる、または書類で落ちる
⑤ 面接 企業と候補者が会う 書類は通るが面接で落ちる。面接の日程が組めないまま流れる
⑥ 内定 企業が採用を決める 面接は良かったのに内定が出ない。条件が合わず内定に至らない
⑦ 承諾・入社 候補者が内定を受け、入社する 内定は出るが辞退される。入社直前に他社へ行く

大事なのは、7つのうちどこで消えているかで、原因の種類がまったく違うことです。①と②で消えているなら集客と初動の問題、③で消えているなら求人と求職者の組み合わせの問題、④〜⑤なら推薦の質と速さの問題、⑥〜⑦なら条件のすり合わせと候補者の心を離さない設計の問題です。「決定が出ない」という一言では、このどれなのかが分かりません。

よくある間違いは、「消えている場所」を見ずに入口を増やすこと

決定が出ないとき、多くの会社が最初にやるのは、求職者の集客を増やすか、扱う求人を増やすことです。どちらも入口を広げる動きです。入口を広げれば、消える場所より手前の人数は増えます。ただし、消える場所がそのままなら、そこを通過する割合は変わりません。③で候補者が消えている会社が集客に費用をかけると、面談の数は増え、「出せる求人が無い」と断る回数も増えます。費用と手間が増えて、決定は増えません。

当社の担当コンサルタントが、これまでに150社以上の人材紹介事業の立ち上げ・グロースを支援してきた範囲で見る限り、立ち上げ直後の会社の詰まりは、①よりも③と④に集まっていることが多いと感じています。求職者との接点は既存事業のなかにあるのに、その人に出せる求人が手元に無い、あるいは求人はあるのに推薦の文面と速さで負けている、という形です。ただし、これは傾向の話であって、自社がどこで詰まっているかは、自社の候補者を数えないと分かりません。

直近3か月の候補者を、紙1枚に並べる

必要なのは、直近3か月に接点を持った求職者の一覧(登録票・面談メモ・メールのやり取り)と、紙1枚です。候補者が数十人までなら、30分から1時間で一巡します。

手順1:横に7つの工程、縦に候補者の名前を書く

紙の上に①接点〜⑦承諾・入社の7つを横に並べ、直近3か月に接点を持った求職者を縦に1人ずつ書きます。全員です。「まだ動いている人」も「連絡が途切れた人」も入れます。

手順2:1人ずつ、どの工程まで進んだかに○を付ける

1人ずつ、進んだ工程まで○を付け、止まった工程に×を付けます。「面談はしたが求人を出せなかった」なら②に○、③に×です。「推薦したが書類で落ちた」なら④に×です。止まった理由が分からない人は、分からないまま「?」と書きます。理由を思い出そうとして手を止めないでください。数えることが先です。

手順3:×が最も多い工程を見る

縦に見て、×がいちばん多く並んだ工程が、自社の詰まりです。たいてい1〜2か所に集中します。全体にばらけている場合は、母数がまだ少なすぎるか、記録が残っていないかのどちらかで、その場合は「記録を残す」が最初の一手になります。

手順4:その工程の×に、理由を1行ずつ書く

×が集中した工程だけ、1人ずつ理由を1行で書きます。③なら「希望の職種の求人が無かった」「条件が合わなかった」「年齢・経験で紹介できる求人が無かった」のように分かれます。⑤なら「面接の日程が組めなかった」「面接で経歴の説明が弱かった」「企業側の求める人物像と違った」のように分かれます。ここまでで、「どの工程で」「どういう理由で」候補者が消えているかが1枚に出ます。これが現在地です。当社の無料相談でも、まずこの1枚から見ています。

直す順番は、消えている工程の「ひとつ手前」から

×が集中した工程が分かったら、その工程そのものではなく、ひとつ手前の工程を先に見ます。候補者が消える場所は、たいてい、その手前の工程で決まっているからです。

  1. ③で消えている(出せる求人が無い)なら、②の面談で聞いていることを見直す。面談で「何がしたいか」だけを聞いていると、手元の求人に合わせる余地が残りません。「どこまでなら受け入れられるか」(通勤圏・勤務形態・年収の下限・職種の幅)を聞いておくと、同じ求人でも出せる人が変わります。求人を増やす前に、面談で聞く項目を変えるほうが早いことが多いです。
  2. ④〜⑤で消えている(推薦しても通らない)なら、③の求人の選び方と、推薦の速さを見る。書類で落ちるのは、候補者の経歴ではなく、求人企業が求めているものと推薦の中身がずれていることが多いです。また、推薦から面接までに日数がかかると、その間に候補者は他社で進みます。推薦の文面の型と、面談から推薦までの日数を決めるのが先です。
  3. ⑥〜⑦で消えている(内定が出ない・辞退される)なら、③〜④で条件を詰めたかを見る。内定辞退の多くは、内定の場面ではなく、推薦の時点で年収や勤務条件のすり合わせが済んでいなかったことが原因です。内定後に慌てて説得するのではなく、推薦の前に「この条件なら受けるか」を確認しておく型に変えます。
  4. ①〜②で消えている(登録が無い・面談に来ない)なら、初めて集客の話になる。ここまで来てから集客に費用をかける順番です。それでも、まず見るのは広告ではなく、既存事業のなかにある求職者との接点です。この点は人材紹介業の立ち上げは何から始めるかで扱っています。

1件目の決定は、知り合いや既存の取引先から出ることがよくあります。それは事業が回り始めた証拠ではありません。2件目以降が、人脈に頼らず、狙って出るかどうかが本番です。そのために要るのが、上の1枚で「どこで消えているか」を毎月数える習慣です。決定の数だけを見ていると、出ない理由はいつまでも分かりません。

※ 当社は、各工程の通過率や決定率の平均値、支援によって決定数がどれだけ変わったかを、統計の数字として公開していません。この記事で書いているのは、立ち上げ支援の実務のなかで見てきた「候補者が消える工程」の構造であり、工程を直せば決定が出るという保証ではありません。求人企業側で採用が決まらない場合の見方は人材紹介会社を使っても採用できないで、企業側の視点から扱っています。

この考え方の呼び名

ここまで、専門用語を使わずに書いてきました。最後に名前を渡しておきます。

求職者との接点から入社までを工程に分け、各工程を何人が通過したかを数える見方は、ファネル(漏斗)分析、あるいは工程ごとの歩留まり管理と呼ばれています。人材紹介の実務では、面談から推薦、推薦から面接、面接から内定、内定から承諾の各段階の割合を追うことを、KPI(重要業績評価指標)管理と呼ぶことが多いです。求職者側を担当するCA(キャリアアドバイザー)と、求人企業側を担当するRA(リクルーティングアドバイザー)という役割の名前も、この工程のどちら側を受け持つかで分かれています。

名前は最後で構いません。先に必要なのは、直近3か月の候補者を紙1枚に並べ、×がどの工程に集まっているかを見ることです。当社の人材紹介事業の立ち上げ支援の考え方は人材紹介事業 立ち上げ支援のページに公開しています。

よくある質問

候補者がまだ10人程度しかいません。それでも並べる意味はありますか。

あります。10人でも、同じ工程に×が3つ並べば、それは偶然ではなく型です。逆に、10人がばらばらの工程で消えているなら、まだ判断できる母数ではないので、増やす前に「全員を記録する」ことから始めます。記録が無い状態で人数だけ増やしても、同じことを繰り返します。

求人が少ないのが原因だと思っています。先に求人開拓をすべきではありませんか。

③に×が集中しているなら、求人が原因である可能性は高いです。ただし、その場合でも先に見るのは②の面談です。面談で受け入れ範囲を聞いていないと、求人を増やしても「出せる人」が増えません。面談の聞き方を変えてから、それでも出せない職種・条件が明確になった時点で、その範囲の求人を開拓する順番のほうが、開拓の的が絞れます。

内定辞退が続いています。候補者の気持ちの問題ではないのですか。

気持ちの問題に見えますが、辞退の多くは推薦の時点で条件のすり合わせが済んでいなかったことが原因です。年収の下限、勤務地、入社時期を、推薦の前に確認していたかを、辞退した候補者ごとに振り返ってみてください。確認していなかった人が並ぶなら、直すのは内定後の説得ではなく、推薦前の確認です。

専任者を1人しか置けません。工程を全部見るのは無理ではありませんか。

全部を同時に直す必要はありません。この記事の手順は、直す場所を1〜2か所に絞るためのものです。1人なら、×が集中した工程の、ひとつ手前だけを直します。月に1回、同じ紙を作り直して×の位置が動いたかを見るだけで、1人でも回ります。

無料相談では、どこまで見てもらえますか。

直近の候補者の一覧をお持ちいただければ、この記事の手順で「どの工程で消えているか」と「その手前で何を変えるか」を一緒に整理するところまでを、初回の範囲としています。求人企業の開拓や、担当者の育成まで含めた支援は、その先の有料の範囲です。

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