採用ページに何を書けば会社の違いが伝わるか|「どの会社でも書ける文」を消し、比べられる5項目を事実で書く

コラム記事

採用ページは作った。会社の雰囲気も、仕事のやりがいも書いた。それでも「他社と何が違うのか分からない」と言われる。先に結論を書きます。会社の違いが伝わらないのは、書き方が下手だからではなく、書いてある内容が「どの会社でも書ける文」だからです。「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」「未経験でも安心」は、御社の隣の会社もそのまま使えます。求職者は複数社の採用ページを横に並べて読んでいます。並べたときに同じ言葉は消え、残るのは「数えられる事実」「決まり方」「その会社にしかない固有名」だけです。この記事では、求職者が実際に比べている5項目、形容詞をどう事実に置き換えるか、社名を隠して読む確かめ方、そして全部を書き直さずに「面接で毎回聞かれる順」に直す順番を扱います。採用ページを作るべきかどうかの判断は別の記事で扱っているので、ここでは「作ると決めた後、何を書くか」に絞ります。

違いが伝わらないのは、「どの会社でも書ける文」が並んでいるから

採用ページを書くとき、多くの会社は「自社の良いところ」から書き始めます。すると出てくるのは、風通しが良い、成長できる、社員を大切にする、といった言葉です。どれも嘘ではありません。ただ、これらは御社の特徴を説明した言葉ではなく、「会社として好ましい状態」を一般名詞で言い換えた言葉です。だから、どの会社が書いても同じ文になります。

求職者の側は、1社だけを読んでいません。求人媒体で候補を絞ったあと、気になった数社のページを開き、同じ項目を比べています。給料はどう決まるのか、1日はどう流れるのか、誰と働くのか、教えてもらえるのか、辞めた人はなぜ辞めたのか。比べる項目が同じなので、そこに答えが無いページは「分からない会社」として後ろに回されます。

さらに最近は、求職者がAIに「この会社はどんな会社か」と要約させてから応募を決める動きがあります(求職者はAIで会社を調べ始めている)。AIに要約させると、形容詞はほぼ落ちます。「アットホーム」は要約に残らず、「月の残業時間は平均◯時間と記載」「入社後3か月は先輩が同行と記載」のような事実だけが残ります。人が読んでもAIが読んでも、残るのは事実の側です。

求職者が横に並べて比べている5項目

比べている項目 どの会社でも書ける書き方 違いが伝わる書き方
① 1日の流れ 「やりがいのある仕事です」 出社から退社までを時刻で並べる。現場に出る日と事務所の日の割合。繁忙期と閑散期の差
② 給与の決まり方 「経験・能力を考慮」 何が上がると給与が上がるのか(資格・担当件数・役職)。昇給の判断を誰がいつ行うか。手当の名前と条件
③ 誰と働くか 「アットホームな職場」 配属先の人数・年齢構成・平均勤続年数。直属の上司になる人の名前と経歴
④ 育て方 「未経験でも安心」 入社後3か月に何をするか。誰が教えるか。一人で任されるまでの目安と、その判断基準
⑤ 続いている人・辞めた人 「定着率が高いです」 直近3年の入社人数と在籍人数。辞めた人の主な理由(会社が把握している範囲で)

右列に共通するのは「数えられる」「決まり方が書いてある」「固有名がある」の3つです。この3つのどれかを含む文は、他社がそのまま流用できません。逆に、3つのどれも含まない文は、どの会社でも書けます。

⑤を書くことに抵抗がある会社は多いです。ただ、書かなくても求職者は口コミサイトで見ています。会社側が先に「辞めた人の理由と、それに対して変えたこと」を書いておくと、口コミの数字だけが一人歩きする状態を防げます。

無料で・自分で・今日できる確かめ方

手順1:社名を隠して読む

自社の採用ページを印刷するか、テキストをコピーして、社名・住所・写真を消します。それを自分で、できれば入社1〜2年目の社員に読んでもらい、「これは何の会社で、他社と何が違うと書いてあるか」を口で言ってもらいます。言えなければ、ページには「違い」が書かれていません。社員が読んで自社と分からないページは、求職者にはもっと分かりません。

手順2:「どの会社でも書ける文」に線を引く

同じテキストに、隣の同業他社がそのまま使えそうな文に線を引きます。線を引いた文の量が全体の半分を超えていれば、書き足すより先に、その文を上の表の右列に置き換える作業が要ります。線を引く基準は「数えられるか・決まり方があるか・固有名があるか」の3つで、感覚ではなく機械的に引けます。

手順3:面接で毎回聞かれる質問と照らす

直近の面接で、応募者から聞かれた質問を思い出して書き出します。「残業はどのくらいですか」「最初は何をするんですか」「給料はどう上がりますか」。毎回聞かれる質問は、ページに答えが無い証拠です。答えがあれば、応募者は聞く前に読んでいます。この質問の一覧が、そのまま「採用ページに足りない項目の一覧」になります。

当社の無料診断でも、この手順1〜3を採用ページに対して行っています。ただし、確かめる作業自体は、ここまでの手順で自社で完結します。

全部を書き直さず、「面接で毎回聞かれる順」に直す

確かめ方の手順3で出た質問を、聞かれた回数の多い順に並べます。上から3つを、表の右列の形で採用ページに足します。これだけで、次の面接からその質問が減り、応募者が「読んで分かった上で来ている」状態に変わります。

採用ページを一から作り直す必要はありません。作り直すと、また「自社の良いところ」から書き始めてしまい、同じ文が並びます。今あるページに、聞かれている順に事実を足していく方が、早く、そして応募者の関心に沿った順番になります。

当社は代表のこれまでの実務で、採用原稿の累計20,000件超(求人原稿1本=1件で集計)を書いてきました。その経験で言えるのは、違いが伝わる原稿と伝わらない原稿の差は、文章の上手さではなく、書く前に会社から事実をどれだけ引き出せたかで決まる、ということです。書く作業より、聞く作業に時間がかかります。ただし、これは原稿の実務から見えた傾向であり、ページを直せば応募が何割増える、という成果の数字を当社は公開していません。

項目ごとの書き方の型や、業種別の文例まではこの記事では扱いません。手順1〜3で「どの項目が足りないか」が分かった段階で、採用支援の無料診断(15〜30分)にご相談いただければ、当社側で同じ手順を当てて、直す順番を返します。

書いてはいけないこと

違いを出そうとして、事実でないことを書くのは逆効果です。理由は2つあります。1つは、求人票と採用ページで言っていることが食い違うと、応募者はどちらも信じなくなること。もう1つは、入社後に「聞いていた話と違う」となり、早期離職につながることです。求人票と実際の仕事のずれをどう防ぐかは別の記事に書いています。

書けない項目は、無理に書かなくて構いません。「平均勤続年数は集計していません」と書く方が、「定着率が高いです」と書くより、読んだ人の信頼は残ります。事実が無いなら、事実が無いことを書く。これも「どの会社でも書ける文」ではない、御社固有の情報です。

この考え方の呼び名

ここまで、専門用語を使わずに書いてきました。最後に名前を渡しておきます。

採用ページで「この会社で働くと何が得られるか」を他社と区別できる形で示す考え方は、EVP(Employee Value Proposition:従業員価値提案)と呼ばれています。この記事で言う「比べられる5項目を事実で書く」は、EVPを形容詞ではなく事実の側から組む作業です。また、良い面だけでなく、大変な面や辞めた人の理由まで先に伝える考え方はRJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)と呼ばれ、入社後のずれを減らす目的で使われています。⑤の項目はこれに当たります。

そして、これらを採用ページやSNSで継続的に発信する活動全体は採用広報、会社を「働く場所」として認知してもらう取り組みは採用ブランディングと呼ばれています。名前は最後で構いません。先に必要なのは、自社の採用ページを社名を隠して読み、「どの会社でも書ける文」に線を引くことです。

よくある質問

小さな会社で、書けるほどの特徴がありません。それでも違いは出せますか。

特徴が無いのではなく、まだ事実として書き出していないだけ、というケースがほとんどです。「配属先は5人で、最年少は24歳、社長も現場に出る」「入社後3か月は先輩と同行し、一人で回るかは所長が判断する」は、どれも特別な制度ではありませんが、書いてある会社は多くありません。規模が小さいほど、人の名前や日々の流れを具体的に書けるので、大手より固有の情報を出しやすい面があります。

給与の決まり方を公開すると、社内で不満が出ませんか。

公開するのは金額の一覧ではなく「何が上がると上がるのか」という決まり方です。決まり方が説明できないなら、公開の前に社内で決める必要があり、それは採用ページの問題ではなく評価の問題です。逆に、決まり方が説明できる会社は、公開しても不満は増えません。むしろ、面接で「どう上がるんですか」と聞かれて答えに詰まる方が、応募者の不安を大きくします。

辞めた人の理由を書くと、応募が減りませんか。

減る場合はあります。ただし減るのは、その理由で辞める可能性が高い人です。書かずに採用して同じ理由で早期離職されるより、応募の段階で自分で判断してもらう方が、会社にも本人にも負担が少なくなります。書くときは理由だけで終わらせず、「それに対して会社が変えたこと」を並べて書くと、正直さが伝わる情報になります。

写真や動画を増やせば、雰囲気の違いは伝わりますか。

写真は「誰と働くか」を伝える助けになりますが、写真だけでは比べられません。求職者が比べているのは、給与の決まり方や育て方といった、写真に写らない項目です。写真を増やす前に、5項目の文章が事実で書けているかを確かめてください。文章が「どの会社でも書ける文」のままで写真だけ良くすると、面接で「思っていたのと違う」となりやすくなります。

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