令和8年度の地域別最低賃金は、9月3日に全都道府県の改定額が出そろいました。全国加重平均は1,177円(改定前1,121円/56円の引上げ)です。
先生方はすでに、顧問先の賃金台帳と雇用契約書の確認に入っておられると思います。この記事でお伝えしたいのは、そこではありません。賃金台帳は直したのに、求人票が去年の金額のまま出続けている会社の話です。
今年は「発効日が2か月にわたって散らばっている」
今年いちばん実務に効くのは、金額そのものより発効日のばらつきです。厚生労働省の公表では、発効は令和8年10月1日から12月2日までの間に順次とされています。
- 10月1日発効:東京(1,280円)、大阪(1,231円)、愛知(1,195円)、埼玉、千葉、神奈川、北海道 ほか
- 11月発効:山梨・徳島・愛媛・大分(11月1日)、長崎(11月2日)、佐賀(11月15日)、京都(11月16日)
- 12月発効:岩手・熊本(12月1日)、沖縄(12月2日)
引上げ額が最も大きいのは佐賀県の65円(1,030円→1,095円)で、発効は11月15日です。九州だけを見ても、宮崎10月24日・鹿児島10月25日・大分11月1日・長崎11月2日・佐賀11月15日・熊本12月1日と、県ごとに1か月以上ずれています。
複数県に拠点を持つ顧問先を抱えておられる先生は、すでにこの管理に入っておられると思います。
賃金台帳は直る。求人票は、直らないまま残る
ここからが本題です。
最低賃金の改定で会社が直すのは、たいてい今いる社員の賃金です。賃金台帳、雇用契約書、給与計算の設定。ここは先生が入るので、まず漏れません。
漏れるのは外に出している求人票のほうです。理由は単純で、求人票を触っている人と、給与計算を触っている人が、社内で違うからです。求人はハローワークや媒体に出したきり、掲載期間が切れるまで誰も開きません。
そして今年は、発効日が10月から12月まで散らばっています。9月に出した求人が、11月や12月の発効日をまたいで生きているという状態が、去年より起きやすくなっています。
実際に何が起きるか
弊社は中小企業の求人原稿の作成・改稿を、代表がこれまでに累計2万件以上手がけてきました。その中で繰り返し見てきたのは、次のような状態です。
- 求人の下限額が、改定後の最低賃金を下回ったまま掲載されている。「時給1,030円〜」のまま、県の最賃が1,095円になっている
- 賃金台帳だけ直したので、求人票と実際の支給額が食い違う。面接で「求人には1,030円と書いてありましたが」と聞かれ、その場で説明することになる
- 既存社員との逆転に、あとから気づく。最賃に合わせて新規採用の下限を上げた結果、数年勤めている社員のほうが低くなる
3つ目は、そのまま先生への相談になって戻ってくる話だと思います。賃金体系の見直しは先生の領域ですが、そのきっかけを作っているのは、外に出ている1枚の求人票だったりします。
顧問先に、この一言を
10月から12月にかけて顧問先を回られるとき、こう聞いていただくだけで足ります。
「賃金台帳は直しましたが、いま外に出ている求人票は去年の金額のままになっていませんか。今年は御社の県の発効日が◯月◯日なので、それまでに直しておきましょう」
確認する場所は3つです。ハローワークの求人(求人者マイページ)、有料媒体の掲載中原稿、そして自社の採用ページ。自社の採用ページは、更新した人が退職していて誰も触れなくなっている、という会社が本当に多いところです。
おわりに
最低賃金の改定は、先生にとっては毎年の業務ですが、顧問先にとっては「自社の求人の出し方を見直す」数少ないきっかけでもあります。金額を直すついでに、求人票そのものが今の会社の実態に合っているかまで見ておくと、来年の採用がずいぶん違ってきます。
弊社は、その求人票と採用ページ、応募が来てからの対応までを、外部が代行して回すのではなく、会社が自社で回せる形に整える支援をしています。労務・社会保険・許認可には立ち入りません。先生の領域はそのままに、採用の入口側だけを担当します。
顧問先との協業の形については、社労士・行政書士の先生向けのご案内にまとめています。
出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日発表)および同「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」(別紙)。発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公表をご確認ください。

