採用の専任担当がいない会社から、「まず誰か採用の担当を置くべきでしょうか」と聞かれることがよくあります。先に結論を書きます。担当を置くより先に決めるべきなのは、応募が来たとき、誰が、何時間以内に、何を返すかです。担当不在の会社でまず落ちるのは「応募が来ない」ではなく「来た応募を取りこぼしている」ほうで、これは求人票を書き直さなくても、1週間の記録で確かめられます。この記事では、その確かめ方と、直す順番を書きます。
「採用担当がいない」とき、実際に落ちているのはどこか
採用の仕事は、ひとかたまりではありません。分けると、だいたい次の7つになります。
- 募集を出す(媒体の選定・掲載・原稿)
- 応募を受け取る(通知が届く)
- 応募者に返信する
- 面接の日程を組む
- 面接する
- 条件を出す・意思確認をする
- 入社日まで連絡を切らさない
専任がいない会社では、この7つが社長・現場責任者・事務担当にばらばらに乗っています。よく見ると、落ちているのは工程そのものではなく、工程と工程の「あいだ」です。応募は届いている、面接もできる。でも「届いてから返すまで」と「返してから日程を出すまで」で、日数が溶けている。
ここを見ずに求人票の書き直しや媒体の追加から入ると、応募は増えても結果が変わりません。入口を広げても、途中で漏れる構造は同じだからです。
最初に落ちるのは、応募数ではなく返信の速さ
応募する側は、たいてい同じ時期に複数社へ応募しています。返信が遅れているあいだに他社の面接が進み、日程が埋まり、辞退の連絡すら来ないまま終わる。専任がいない会社で最も起きやすいのは、この形の取りこぼしです。
原因は本人のやる気ではなく、たいてい仕組みの側にあります。
- 通知が誰にも届いていない。媒体の管理画面にしか通知が来ておらず、ログインした人しか気づけない。
- 届いているが、埋もれている。会社の代表アドレスに他の連絡と混ざって入り、見落とされる。
- 誰が返すか決まっていない。全員が「誰かが対応しているだろう」と思っている。
- 返す文面をその都度考えている。手が空くまで着手されない。
いずれも、人を増やさなくても今日決められることです。逆に言えば、ここを決めないまま採用担当を置いても、判断の基準が無いので同じことが起きます。
今の状態を、1週間で測る手順
費用はかかりません。必要なのは記録だけです。
手順1:応募の入口を全部書き出し、通知先を確認する
求人媒体、自社サイトの応募フォーム、電話、知人紹介——受け口を全部書き出します。そのうえで、それぞれの通知が誰のどこに届くのかを実際に確認してください。自社サイトのフォームは、自分でテスト送信するのが確実です。送ったのに誰にも届かない、迷惑メールに入っている、というのは珍しい話ではありません。
手順2:直近の応募を1枚に並べる
直近1〜2ヶ月の応募について、「応募日時/初回返信の日時/面接まで進んだか/結果」を横に並べます。媒体をまたいで、1枚にまとめるのが要点です。媒体ごとの管理画面を別々に見ているかぎり、全体の落ち方は見えません。
手順3:日数の差を見る
並べたら、応募から初回返信までの時間を数えます。ここで多くの会社は、平均ではなくいちばん遅かった案件に目を向けたほうがいいことに気づきます。速いときは当日、遅いときは4日後——このばらつき自体が「決まっていない」ことの現れです。
手順4:求人票を見るのは、そのあと
返信が速く、面接まで進んでいるのに決まらないのであれば、原因は選考の中身や条件面にあります。逆に、面接まで到達していないのなら、求人票を書き直しても効果は限定的です。どちらの問題なのかを先に切り分けるための1週間だと考えてください。応募が来ない段階から見直す場合の順番は採用媒体を増やしても応募が来ない理由に、求人票そのものの見直しは求人票の書き方を見直すだけで応募数が変わるに書いています。
担当を置く前に決める3つのこと
測り終えたら、決めるのは3つだけです。人を採る話ではなく、役割を決める話です。
| 決めること | 決めないと起きること | 最低限の決め方 |
|---|---|---|
| 誰が一次対応するか | 全員が「誰かがやる」と思い、着手が遅れる | 役職ではなく名前で決める。不在時の代わりも1人決める |
| 何時間以内に返すか | 手が空いたときの対応になり、日数がばらつく | 営業日で区切って基準を1つ置く。守れているかを記録する |
| 面接日程の出し方 | 調整の往復で数日かかり、他社に先を越される | 面接に使える枠をあらかじめ決め、初回返信で候補日を出す |
この3つが決まると、対応の速さが人によってぶれなくなります。専任を置くかどうかは、そのあとの判断で構いません。決め方の細部——返信の文面や、面接枠をどう運用するか——は会社の体制によって変わるため、この記事では扱いません。
外注を使うなら、何を出して何を残すか
手が足りないぶんを外に出すのは、選択肢として妥当です。ただし出す範囲を間違えると、費用をかけた期間が終わったときに社内に何も残りません。
出しやすいのは、作業です。媒体の運用、原稿の作成、応募者への一次連絡、日程調整。逆に残しておくべきなのは判断と記録です。誰を通すか、なぜ見送ったか、どの媒体からどんな人が来たか。ここを外に預けたままにすると、契約が切れた瞬間に採用の基準ごと消えます。
外注を続けた場合に何が残らないかは月100万円の採用代行を5年続けた会社に、何が残ったかに、紹介会社を使っても決定が出ない場合の原因は人材紹介会社を使っても採用できない会社に共通する3つの問題にまとめています。
当社の代表はこれまでの実務で、求人原稿を累計20,000件超(1本=1件として集計)書いてきました。その経験から言えるのは、原稿の巧拙より、応募のあとの動きのほうが結果を左右する場面が多いということです。集計の条件は実績ページに明記しています。
この考え方の呼び名
ここまで、専門用語を使わずに書いてきました。最後に名前を渡しておきます。
応募から入社までの流れを工程に分け、誰が・いつまでに・何をするかを設計することを、採用オペレーション設計と呼びます。そのうち、応募者から見た体験(返信の速さ、連絡の分かりやすさ、面接での印象)に着目する考え方は候補者体験(Candidate Experience)と呼ばれます。そして、こうした判断と記録を外注先ではなく自社に置く方針が採用の内製化です。
もう一つ、近年加わった論点があります。応募者は応募ボタンを押す前に、AIに会社の評判を聞いています。そこで何が語られているかは、返信の速さと同じくらい辞退に効きます。この点は当社のコラム「求職者はAIで会社を調べてから応募する」で別途扱っています。
よくある質問
採用担当は、結局のところ置いたほうがいいですか。
母集団の規模と採用人数によります。年に数名の採用であれば、専任を置くより「誰が・何時間以内に・どう返すか」を決めるほうが先に効きます。決めたうえで手が回らないことが記録で分かってから、専任を置くか外注するかを判断してください。順番を逆にすると、置いた人が何を基準に動けばいいか分からなくなります。
社長が一次対応をしても問題ありませんか。
問題ありません。むしろ返信が速くなり、応募者にとっては印象が良い場合もあります。注意点は、社長が動けない日に止まることです。代わりに対応する人を1人決めておいてください。
応募が月に数件しかありません。それでも測る意味はありますか。
あります。件数が少ないほど、1件の取りこぼしが重くなります。数が少なければ記録も数分で終わります。
何から相談すればいいか分かりません。
手順1〜3の記録を持ってきていただければ、そこから話ができます。当社では採用の無料診断(15〜30分・オンライン・無理な勧誘なし)で、採用費のムダと改善の優先順位を整理しています。

