求人と求職者のマッチングをAIに任せる前に|条件の一致と、提案の理由を分ける

コラム記事

求人と求職者のマッチングにAIを使うと、条件の合う求人の候補はすぐに並びます。ただし、条件が合うことと、その求人を提案する理由があることは別です。AIに任せる前に確かめるのは、求職者の希望のうち条件として書けるものと書けないものが分かれているか、そして「なぜこの求人を勧めるのか」を担当者が言えるかです。条件の一致はAIの得意な作業ですが、提案の理由と、その理由を本人に確かめることは人が持ちます。この記事では、マッチングで起きていることを分け、手元の記録で今日できる確認と、任せる範囲の決め方を説明します。

条件が合う求人を並べることと、提案することは別の仕事

人材紹介の仕事では、求職者の希望と求人の条件を照らし合わせ、紹介する求人を選びます。職種、勤務地、年収、働き方といった条件は、表にして照合できます。この照合は、件数が増えるほど人の手では追いきれなくなるため、AIや検索の仕組みが役に立つ部分です。

一方で、条件が合う求人を並べただけでは、求職者は選べないことがあります。同じ条件の求人が何件も並ぶと、どれを選ぶ理由があるのかが分かりません。求職者が知りたいのは、「この求人が自分に合う理由」です。前の職場で何に困っていたか、次に何を大事にしたいかといった、面談で聞いた話と求人の中身がつながったとき、初めて提案になります。

条件の一致だけで提案を続けると、応募には進んでも、面接で「思っていた仕事と違う」と辞退されることがあります。条件が合っていることは、決定につながることの前提ではありますが、十分ではありません。決定までのどこで候補者が離れているかを工程で見る考え方は、決定が出ない原因を工程で並べる記事で整理しています。

求職者の希望には、条件にできるものと、できないものがある

AIに照合を任せるとき、まず分けておきたいのが、求職者の希望のうち条件として書けるものと、書けないものです。書けるものは照合の材料になり、書けないものは担当者が面談で確かめ、提案の理由に使うものです。以下は分け方の観点で、そのまま使う入力項目の一覧ではありません。

希望の種類 例 AIでの照合 人が持つこと
条件として書ける希望 職種、勤務地、年収の下限、勤務時間、転居の可否 候補の求人を絞り込む作業の候補になる 条件が本人の本音か、譲れる幅があるかの確認
条件にしにくい希望 前の職場で避けたかったこと、次に大事にしたいこと、合う上司の型 文章から手がかりを拾うことはできるが、判断には使わない 面談で確かめ、求人のどこに合うかを言葉にする
本人も言葉にしていない希望 迷いの理由、家族の事情、転職の時期の揺れ 扱わない 面談で聞き取り、提案の時期や順番を決める

条件にしにくい希望を、無理に条件へ置き換えないようにします。置き換えた時点で、本人の言葉の意味が変わることがあるためです。

条件として書ける希望も、本人が本当に譲れない線なのか、面談の場で言っただけなのかで意味が変わります。年収の下限を少し下回っても、別の点で強く惹かれる求人があれば、本人が選ぶこともあります。照合の結果から外れた求人に良い提案があるかもしれない、という見方を担当者が持っておくことも大切です。

無料で・自分で・今日できる確かめ方

手順1:最近の提案を並べ、提案の理由を書き出す

最近求職者に提案した求人を並べ、それぞれについて「なぜこの求人を勧めたか」を一文で書きます。条件が合うから、という理由しか書けない提案が多ければ、提案の理由を面談の記録から組み立てる材料が足りていない可能性があります。AIに照合を任せる前に、ここを確かめておくと、何を人が持つべきかが見えてきます。

手順2:辞退や見送りの理由を、条件の問題と中身の問題に分ける

提案した求人で、応募に進まなかったもの、面接で辞退されたものを並べ、本人が伝えた理由を書き写します。年収や勤務地といった条件の問題なら、照合の精度を上げることで減らせる余地があります。仕事の中身や職場の雰囲気の問題なら、照合ではなく提案の理由と事前の説明の問題です。

手順3:面談の記録に、条件にしにくい希望が残っているかを見る

面談の記録を読み返し、条件として書ける希望だけでなく、本人が大事にしたいことや避けたいことが残っているかを確かめます。記録に条件しか残っていなければ、AIに照合を任せても、提案の理由を作る材料がありません。面談で何を確かめるかを決め直すことが先です。面談記録と推薦文の扱いは、採用・人材紹介のどこにAIを使うかを整理した記事が前提になります。

手順4:求人側の情報が、照合に使える形になっているかを見る

求人の条件が、必須と歓迎、確定と相談可能に分かれているかを確かめます。企業から受け取った求人票のままでは、この区別が曖昧なことがあります。照合に使う求人の情報が曖昧なら、AIに任せても、条件が合うように見えて実は合っていない候補が混ざります。当社の人材紹介立ち上げ支援の無料診断でも、この確認を行っています。

任せる範囲は、照合の下準備から決める

AIに最初に渡しやすいのは、条件として書ける希望と、整理された求人の条件を照らし合わせ、候補を絞り込む下準備です。候補の一覧は担当者が確かめる前提で使い、その中から提案する求人を選ぶのは担当者です。この段階なら、間違いがあっても求職者に届く前に止められます。

次に、選んだ求人と面談の記録をもとに、提案の理由の下書きを作る使い方があります。ただし、理由の中身を決めるのは担当者で、AIが作った理由をそのまま求職者に伝えることはしません。本人が話していない希望を、もっともらしい理由として付け足してしまうおそれがあるためです。

求職者に求人を提案する、どの順番で提案するかを決める、企業に候補者を推薦する、といった判断は人が持ちます。どの判断を誰が持つかは、紹介会社の体制や扱う職種によって変わるため、この記事では具体的な運用手順は扱いません。仕事を作業と判断に分ける考え方は、AIに任せる仕事と人が確認する仕事の線引きが参考になります。

マッチングの効果は、決定までの流れで見る

AIで候補を早く並べられるようになっても、それだけで効果があったとは言えません。提案から応募、面接、内定、入社までのどこで候補者が離れているかが変わったかを、同じ条件で比べて初めて判断できます。提案の件数が増えても、辞退が増えていれば、求職者の負担を増やしているだけかもしれません。

比べるには、提案した求人ごとに、提案の理由と、その後どこまで進んだかを記録しておく必要があります。記録がなければ、効果は測れていないと扱います。本記事では、AIによるマッチングで決定が増えたことを示す実測値は掲載していません。

この考え方の呼び名

求職者と求人を照らし合わせて紹介先を選ぶことは、人材紹介の仕事ではマッチングと呼ばれます。求職者を担当する担当者はキャリアアドバイザー(CA)、企業を担当する担当者はリクルーティングアドバイザー(RA)と呼ばれることが多く、両方を一人が受け持つ形は両面型と呼ばれます。

マッチングにAIを使うときは、条件の照合という作業と、提案の理由を決めて本人に確かめるという判断を分けます。条件の照合はAIの候補になり、提案の理由と提案するかどうかは人が持ちます。

この組み方を当社は AI HR と呼んでいます。採用・人材紹介の仕事にAIを組み込むときの、私たちの組み方の呼び名です。面談記録の要約、推薦文や求人票の下書き、日程調整の連絡はAIに任せ、求職者への提案理由、選考の評価と合否、企業や求職者との約束は人が持ちます。

作業と判断の分け方は、AI HR の考え方にまとめています。求人の提案の仕方を見直す際に、あわせてご覧ください。

よくある質問

マッチングはAIに任せてもよいですか。

条件として書ける希望と、整理された求人の条件を照らし合わせて候補を絞る下準備は、AIの候補になります。その中から提案する求人を選び、提案の理由を決めて求職者に確かめることは担当者が持ちます。

条件が合う求人を提案しているのに、辞退されるのはなぜですか。

条件の一致は決定の前提ですが、十分ではありません。仕事の中身や職場の雰囲気が本人の大事にしたいことと合っていない場合、面接で辞退されることがあります。辞退の理由を、条件の問題と中身の問題に分けて確かめます。

面談の記録にAIを使えば、マッチングの精度は上がりますか。

記録を整理することはできますが、記録に条件しか残っていなければ、提案の理由を作る材料はありません。本人が大事にしたいことや避けたいことを面談で確かめ、記録に残すことが先です。

AIを使ったマッチングの効果はどう測ればよいですか。

提案した求人ごとに、提案の理由とその後どこまで進んだかを記録し、同じ条件で前後を比べます。提案の件数だけが増えて辞退も増えている場合は、効果があったとは言えません。記録がなければ、効果は測れていないと扱います。

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